辻留の夏
素麺をいただいた。
淡いながらも旨味の品格があるつゆに、素麺をつけて手繰る。
つるるるっ。
冷たい糸が唇をすり抜け、吸い込まれていく。
喉が喜んでいる。
小麦の甘みと出汁のうまみを受けとめながら、震えている。
添えられしは、極細に切られた、紫蘇と錦糸玉子、椎茸飴煮の細切りと茗荷、茹でた海老である。
代わる代わるつゆに入れては、紫蘇や茗荷の香りを楽しみ、椎茸や海老のうまみに目を細める。
さあ、味がわりをしてみよう。
梅酢を注いで、深い酸味を楽しみ、胡麻油を注いでは、勇壮な味わいに驚き、ごまだれを入れては、豊かな風味との出会いに笑う。